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MLMで行政処分が出たと聞くと、多くの人は「商品に問題があったのか」「報酬プランが違法だったのか」と考えます。しかし、公表資料を実際に読むと、理由はほぼ別のところに集中しています。
この記事では、消費者庁が公表した処分事例で実際に認定された違反行為を、特定商取引法の条文ごとに整理します。会社名の一覧ではありません。並べるのは「何をしたら処分になったか」のほうです。
理由は2つあります。ひとつは、会社名を並べても読者の行動が変わらないこと。もうひとつは——これが本題ですが——同じ違反が、規模も業歴もまったく違う会社で繰り返し起きていることです。
★まず結論|最大手も、中堅も、同じ理由で処分されている
当ブログが公表資料で内容を確認できた、代表的な2件を並べます。
| フォーデイズ株式会社 | 日本アムウェイ合同会社 | |
|---|---|---|
| 公表 | 2017年(平成29年)11月24日 | 2022年(令和4年)10月14日 |
| 規模 | 年商303億円(2026年3月期) | 業界最大手 |
| 処分 | 特商法第39条第1項にもとづく連鎖販売取引の一部停止命令 | 同じく第39条第1項にもとづく取引の一部等の停止命令 |
| 期間 | 6か月(2017年11月25日〜2018年5月23日) | 6か月(2022年10月14日〜2023年4月13日) |
| 停止対象 | 新規勧誘・申込受付・契約締結 | 勧誘・申込受付・契約締結 |
| あわせて | 第38条第1項の指示 | 第38条第1項の指示(再発防止策とコンプライアンス体制の構築) |
| 認定された違反 | 氏名等不明示/不実告知 | 氏名等の明示義務違反(統括者の名称および勧誘目的の不明示)/勧誘目的を告げずに誘引した者への公衆の出入りしない場所での勧誘 |
5年離れた、規模も商材も違う2社が、どちらも「氏名等不明示」で処分されています。
これが本記事の要点です。処分の理由は、商品でも報酬プランでもなく、勧誘の入口にあります。そして入口の行為は、会社が決めるものではなく、現場の一人ひとりがその場で決めるものです。
個別の事例はフォーデイズを構造で解剖とアムウェイ業務停止命令(2022)を検証で詳しく扱いました。本記事はその横断整理です。
違反行為ランキング|処分理由として実際に挙がる順
特定商取引法が連鎖販売取引に課す規制を、処分事例での登場しやすさで並べます。順位は当ブログ編集部の整理であり、統計順位ではありません。
| 順位 | 違反行為 | 条文 | どんな場面で起きるか |
|---|---|---|---|
| 1位 | 氏名等の明示義務違反 | 第33条の2 | 会って最初の一言 |
| 2位 | 勧誘目的を告げない誘引+公衆の出入りしない場所での勧誘 | 第34条第4項 | カフェから自宅・事務所へ移動したとき |
| 3位 | 不実告知 | 第34条第1項 | 効果・収入を語るとき |
| 4位 | 故意の事実不告知 | 第34条第2項 | 都合の悪い条件を言わないとき |
| 5位 | 威迫困惑 | 第34条第3項 | 断られた後の粘り |
| 6位 | 書面不交付・記載不備 | 第37条 | 登録手続きのとき |
| 7位 | 誇大広告等 | 第36条 | SNS・LP・チラシ |
上位3つは、すべて「人と会っている場面」で起きます。書類でも広告でもありません。順に見ていきます。
★1位|氏名等の明示義務違反(第33条の2)
勧誘に先立って、次の3つを告げなければなりません。
- 統括者・勧誘者・一般連鎖販売業者の氏名(名称)——自分の名前だけでは足りず、会社の名称が要ります
- 特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨
- その勧誘に係る商品または役務の種類
フォーデイズの事例では、勧誘者が事前連絡なく相手の自宅を訪問し、「ちょっと、上がってもいいですか。」等と告げるのみで、この3つを明らかにしていなかったと認定されました。
アムウェイの事例でも、統括者の名称および勧誘目的の不明示が認定されています。
つまり「◯◯さんに会いに来ただけ」という体で入り、あとから本題に入る——この進め方が、法律が正面から禁じている形です。悪意の有無は関係ありません。
言い換えると、こうなります
| 言い方 | 評価 |
|---|---|
| 「久しぶり、近く来たから寄った」→ 座ってから本題 | 3つとも欠けている |
| 「いい話があるんだけど、会えない?」 | 目的も会社名も商品も不明。足りない |
| 「◯◯という会社の製品を扱っていて、一緒にやる人を探している。会って話せますか」 | 3つを満たす形 |
3行目のように言うと断られる——という声はあると思います。しかし、断られる言い方が違法ではない言い方だという事実は変わりません。
★2位|勧誘目的を告げない誘引+公衆の出入りしない場所での勧誘(第34条第4項)
1位と対になる規定です。勧誘目的を告げずに誘い出した相手を、公衆が出入りしない場所へ連れて行って勧誘することが禁止されています。
アムウェイの事例で認定されたのは、まさにこの形でした。
実務上、境目になるのは場所です。
| 場所 | 公衆の出入り |
|---|---|
| 喫茶店・ファミレス・カフェ | あり |
| 自宅・個人の部屋 | なし |
| 事務所・会議室・レンタルスペース | なし(一般に) |
| ホテルのロビー | あり |
| ホテルの客室 | なし |
よくあるのは「カフェで会って、その後に場所を移す」という流れです。移動した先が上表の下段にあたり、かつ最初に目的を告げていなければ、この条文の領域に入ります。
勧誘が起きやすい場面ランキングで「断りにくさ」を基準に順位づけしましたが、法律の側も同じところを見ています。断りにくい場所ほど規制が厳しい、と考えると分かりやすいはずです。
★3位|不実告知(第34条第1項)
重要事項について、事実と違うことを告げる行為です。対象になる重要事項には、商品の品質・性能、特定利益(報酬)、特定負担(費用)、契約解除の条件などが含まれます。
フォーデイズの事例では、勧誘者が「本件商品を摂取することで、あたかも病気の治療若しくは予防又は症状の改善ができるかのように告げていた」と認定され、消費者庁は「本件商品にはそのような効能はない」と明示したうえで、購入者への通知を命じました。
ここで押さえるべきは「効能を語ることは、薬機法だけの問題ではない」という点です。
| 法律 | 何が問題になるか |
|---|---|
| 薬機法 | 医薬品的な効能効果の標ぼう |
| 特商法(不実告知) | 勧誘の際に事実と異なることを告げること |
| 景品表示法 | 優良誤認表示 |
同じ一言が、複数の法律に同時に触れ得ます。詳しくは薬機法のNG表現一覧と不実告知と断定的判断の提供をご覧ください。
なお収入についての不実告知も同じ条文です。「必ず月◯万円になる」という言い方は、報酬シミュレーションの前提を満たさない限り、事実と異なる告知になり得ます。
4位〜7位|残りの4類型
4位|故意の事実不告知(第34条第2項)
重要な事実を、故意に告げないことです。嘘をつかなくても成立します。
典型は費用の説明です。登録料は言うが、毎月の資格維持に必要な購入額は言わない。やめるときの条件は聞かれるまで触れない——こうした形が該当し得ます。
5位|威迫困惑(第34条第3項)
相手を威迫して困惑させる行為です。大声や脅しだけを指すわけではありません。複数人で囲む、帰りたいと言っても話を続ける——こうした状況も含まれ得ます。
引き止めの場面で起きやすい点はやめると伝えたときに起きることで扱いました。
6位|書面不交付・記載不備(第37条)
契約前に「概要書面」、契約後に「契約書面」を交付するのは事業者の義務です。
ここは読者にとって最も使いやすい判定基準でもあります。書面をもらっていないという状態自体が法律上の問題であり、同時にクーリング・オフの20日の起算も始まりません。
7位|誇大広告等の禁止(第36条)
著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示の禁止です。SNSの投稿も表示に含まれ得ます。
また第35条により、広告には商品の種類・特定負担・特定利益の計算方法・統括者の氏名・住所・電話番号などの表示が求められます。「詳しくはDMで」だけの投稿は、この要件を満たしていません。
★処分には3段階ある
行政処分は一種類ではありません。重さの順に3つあります。
| 処分 | 条文 | 内容 | |
|---|---|---|---|
| 軽 | 指示 | 第38条 | 業務改善の指示。再発防止策やコンプライアンス体制の報告を求められる |
| 中 | 取引等停止命令 | 第39条 | 一定期間、勧誘・申込受付・契約締結などを停止させる |
| 重 | 役員等の業務禁止命令 | 第39条の2 | 会社ではなく「人」に対して業務を禁止する |
注目してほしいのは第39条の2です。会社に停止命令を出しても、役員が別会社を作って同じことを続ければ意味がありません。そのため、役員等個人に対して業務を禁止できる規定が置かれています。
ここから読めることは重要です。制度は「会社の看板」ではなく「行為をした人」を見ています。会社が処分されるだけで自分は関係ない、という理解は正確ではありません。
勧誘する側・される側のチェックリスト
勧誘する側が守る3点
- 会う前に、会社名・目的・商品の種類を伝える。これだけで1位と2位を同時に回避できます
- 効果と収入は断定しない。「治る」「必ず稼げる」は3位の領域
- 概要書面を登録前に渡す。6位の回避であり、相手の信頼にもなります
勧誘される側が確認する3点
- 最初に会社名と目的を言われたか。言われていないなら、その時点で記録に残す
- 場所を移されなかったか。カフェから自宅・事務所への移動は境目です
- 効果や収入を断定されなかったか。言われた言葉をそのままメモする
記録の残し方は記録・証拠保全に使えるツール5選に、会社の処分歴を自分で調べる手順は勧誘された会社を自分で調べる7つの手順にまとめています。消費者庁の行政処分公表情報は、会社が非公開でも隠せない数少ない情報源です(情報公開レベル5段階)。
★処分を出すのは消費者庁だけではない
会社の処分歴を調べるときに、多くの人が見落とす点があります。連鎖販売取引の行政処分は、国(消費者庁)だけでなく、都道府県知事も出します。
消費者庁の「特定商取引法ガイド」に掲載されている執行事例を見ると、国の処分に混じって東京都や県が出した連鎖販売取引の処分が並んでいます。停止期間が9か月・12か月といった長期のものも含まれます。
| 処分を出した主体 | どこに公表されるか |
|---|---|
| 消費者庁(国) | 消費者庁サイトの「公表資料」ページ |
| 都道府県知事 | 各自治体のサイト(報道発表・お知らせ等) |
| 両方 | 消費者庁「特定商取引法ガイド」の執行事例の検索 |
ここから導かれる実務上の注意点は、ひとつです。
「消費者庁のページで見つからなかった=処分歴がない」とは言えません。都道府県の処分は、消費者庁のプレスリリース一覧には並ばないからです。
当ブログが企業レビューで「確認できなかった。ただし不存在の証明ではない」という書き方を繰り返しているのは、この構造があるためです。
調べ方は3ステップ
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」の執行事例の検索で、取引類型を連鎖販売取引に絞る。国と都道府県の両方が対象になります
- 会社の所在地の都道府県サイトを「会社名+処分」で確認する
- 見つからなかった場合は「見つからなかった」と記録する。「処分はない」と結論しない
手順の詳細と、法人番号・特商法表記の読み方は勧誘された会社を自分で調べる7つの手順にまとめています。すべて無料で、30分あれば終わります。
まとめの前に|この記事で断定していないこと
| 論点 | 本記事の立場 |
|---|---|
| 順位の統計的な正しさ | 統計順位ではない——公表資料と条文構成にもとづく編集部の整理 |
| 処分歴のある会社が危険か | 判定しない——処分は判断材料の一つに過ぎない |
| 両社の現在の営業実態 | 調べていない——扱ったのは公表された処分内容のみ |
| 個別の行為が違法かどうか | 判定しない——事実関係により結論が変わる |
| 処分事例の網羅性 | 網羅していない——内容を確認できた代表例のみを扱った |
| 本記事が法律相談にあたるか | あたらない——個別事案は188または弁護士へ |
※条文と処分内容は、消費者庁「特定商取引法ガイド」および同庁の公表資料(2017年11月24日付・2022年10月14日付)の記載にもとづきます。最新の内容は必ず消費者庁のサイトでご確認ください。
まとめ|処分の理由は、いつも入口にある
公表資料を読んで分かるのは、行政処分の理由が商品や報酬プランではなく、勧誘の入口に集中しているということです。
フォーデイズ(2017年)と日本アムウェイ(2022年)。規模も商材も業歴も違う2社が、5年離れて、同じ「氏名等不明示」で処分されました。
氏名等の明示義務が求めているのは、たった3つです。会社の名称。勧誘の目的。商品の種類。——会う前にこれを伝えるだけで、処分理由の1位と2位を同時に避けられます。
そして第39条の2が示すとおり、制度は会社の看板ではなく、行為をした人を見ています。「会社が処分されるだけ」ではありません。
勧誘される側にとっても、判断は単純になります。最初に、会社名と目的を言われたか。それだけを覚えておいてください。言われなかったという事実は、後から効いてきます。
関連して、MLM会社チェックリスト25項目、MLM企業一覧2026、MLM業界に起きている構造変化2026もあわせてご覧ください。
この記事を読んで「自分には合わないかも」と感じた方へ
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※本記事は2026年9月時点で確認した公開情報にもとづく一般的な整理であり、特定の事業者の現在の適法性を判定するものではありません。判断に迷う場合は消費者ホットライン188、または弁護士等の専門家にご相談ください。

